2017年 02月 05日
☆ 第46回<ほのか座> 立春公演 ★ <誰でもないあなた>へ |
第46回 <ほのか座> 立春にちなんで
司会―皆さま、本日もようこそいらっしゃいました!お馴染みの
お客様方のつややかなお顔を拝見できまして、何よりの
喜びでございます。
早いもので、一昨日は節分、そして昨日は立春を迎えました。
ひと頃よりも、日差しに力が増したのを感じますね。
そこで今日は、どこかこの国の奥地でひとり立春を迎えた
ある老女の、一シーンを描いた詩の朗読をお届けいたします。
バックスクリーンには影絵芝居、そしてジャズトリオの
フルート・ベース・ドラムスによるソフトな演奏が盛り
上げてくれるなか、老女優(失礼かな?)の雲母さんに
朗読をおねがいします。
では幕があきます、どうぞ!
うつくしい日
「立春のひかりを両の掌(て)にいただきまして…」
――
やっと今朝かすかな兆しめいた胸騒ぎをおぼえて ついぞなかった
努力を身体に言い聞かせ 幾重にもかさなった織物、編み地の
なかからどうにか手指、足先をひき出して なおも手古摺ったり
ぐらりとこけそうにもなったすえ ガシガシンガガ… 久方ぶりに
板戸を引き開けて
そこにひろがる冬枯れた畑地を 濁ったそこひの瞳で見呆け―
しばらくあって
いまのいままで凍てついていた錆ついていたそれぞれの骨、
関節、やせきった筋肉などわななき折ろうとでもするように
はためかせ あるいは 人形が躍るタンゴのステップを
スローモーションで展開するようにも唐突、華麗に片足、片足
踏み出して ごぉーごぉーと息をつき
気の遠くなるほどの時間と全身運動をついやしてのち はじめて
老婆は おおいぬのふぐりをがまの姿形(かたち)で見つめて
いた
司会―ありがとうございました!皆さま、お楽しみいただけ
ましたか?
老若男女ともどもに春の訪れを喜び、このささやかな
小屋が皆様方の憩いの場となれば、と願っております。
では、お風邪など召しませんように、お気をつけて!
★ <誰でもないあなた>へ
このところ立て続けにテレビでよい日本映画を観ました。
「耳を澄ませば」・「夏の庭」・「あん」―ご覧になった方も
多いのではないでしょうか。
平凡な日常生活にふと射し込んだ清新なひかり、なぞ、そして
味わい…を心に焼き付けてくれました。
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by honoka018
| 2017-02-05 14:38