2016年 10月 23日
☆ 第41回<ほのか座> 『電話三態』 ★ <誰でもないあなた>へ |
第41回<ほのか座> 寸劇『電話三態』
司会―皆さま、本日もようこそいらっしゃいました!
この度は、鳥取地方を震源とする大地震に見舞われまして、
又してもこのところ大荒れする自然の様子に呆然として
しまいますね。何とか皆で力を合わせて、その都度立ち直って
いくしかないのでしょうね。
さて当芸能小屋きょうの出し物は、『電話三態』。
それぞれ一人ずつ三人の俳優が、寸劇の形で電話場面を演じ
ます。バックスクリーンに背景が映し出され、シンプルな
舞台装置、それに尺八奏者の演奏も加わりますので、どうぞ
皆さま、ミニドラマをお楽しみくださいませ。
[電話ⅰ] やさしいなぁ
―尺八の低い音色がドラマのあいだ中、うねるように静かに鳴ってい
る。バックスクリーンにやや荒れ模様の空の風景。舞台中央付近に、
一本の老木。葉がかなり落ちて、あたりに散らばっている。
仲居のような和服姿の女が出てきて、すこしよろめくようにして
木に寄りかかり、電話機を耳にあてる―
もうええのんや ありがとさん
こんなに親身になってもろうたの うち
はじめてかもしれん
もう大丈夫やさかいこれ以上心配せんといて
あんさんは すっぱりと
ご自分の道を行きなはれ
(うちのことはもうええから…)
それじゃあ おたがい
おのれの身をじゅうじゅういたわって、な
ほんなら!
―尺八の音色、消え入るように。舞台暗転―
[電話ⅱ] キャンプ
―舞台が明るくなると、バックスクリーンに紛争地の映像が流れ、
尺八の荒々しい音色が時に激しく響いている。舞台上に瓦礫。
がっしりとした体格の男がボロをまとい、歩いて来て、中央
あたりであぐらをかいて地面に座る。
あぁオレだ ありがと つながったなぁ
あぁいつもとおんなじさ 乾いた空と瓦礫を前に
日がな一日うずくまってるだけ
時々 遠くに硝煙が立つ
それにつづいてかすかな地鳴りも
空腹?喉のかわき? 忘れっちまったな、そんなもの
時々おこりみたいに体が震えるけど…
幼いものたち?やめてくれ!見ないようにしてるんだ
あした ここの連中と移動をはじめる、とさ
そのうちまた連絡するよ 生きてたら、な
―尺八、最後に激しい息の音を発して、途切れる。暗転―
[電話 ⅲ] まちがい電話?
―変に明るい単純な曲調を尺八が奏でている。バックスクリーン
に無機的な団地風景が展開してから、その一室の飾り気のない
平窓が映しだされる。舞台上に、シンプルなテーブルと椅子。
椅子に腰かけている男。
いいえ ちがいます
そんなひと ここにいません
えぇわたしひとりです ずっと
知りません わかりません
ここに住んでるのは いいですか わたしと
それから大亀一匹だけ ですから…
失礼します
―終わりのないような尺八の調べが徐々に小さくなって、暗転―
司会―皆さま、ありがとうございました。電話って、ちょっと
怖いですね。
ではまた来月、どうぞお元気なお顔を見せてくださいます
ように!お足元にご注意をねがいます。
★ <誰でもないあなたへ>
落語大好き人間の私、筆頭はいまは亡き談志ですが、最近図書館
で先代の桂文楽を借りてきて、すっかり参りました。
若い頃だか子供時代だったか、その生前の声も聴いてはいたんですが
こんなにも凄いものだったとは…ある程度齢を重ねないと、見えて
こないものもあるのだなぁ、と(自分の鈍を棚に上げて)感じ入った
次第です。惚れ惚れするとは、正にこのこと。
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by honoka018
| 2016-10-23 16:15